乱立する世界チャンピオン
ボクシングに関する知識の少ない人にとって、不思議に思うのは、世界チャンピオンって何人いるの?
ということです。
先日ミドル級の世界チャンピオンに返り咲いた村田諒太選手が、2017年10月にアッサン・エンダムに勝利して竹原慎二以来22年ぶりのミドル級世界チャンピオンの座を手にしたときの勝利者インタビューで、「ボクシングファンの皆さんはミドル級には自分よりも強いチャンピオンがいることをご存知だと思います」と話していました。
ボクシングファンはともかく、普通の人は世界チャンピオンになった村田よりも強いチャンピオンがいるの?
世界チャンピオンって1人じゃないの?
なんて思ったはずです。
世界チャンピオンとは
じゃあ世界チャンピオンってなんだろうということを解説していきます。
たとえばあなたが、俺は世界で一番ボクシングが強いんだ!
と主張するのは自由です。
ただし、それだけでは”自称世界チャンピオン”です。
誰も信用してくれません。
もしも世界中のボクサーをチェックしている団体が、「うん、あなたが一番強い、世界チャンピオンです。」
とお墨付きをくれたら、世界チャンピオンと名乗っても間違いないということになります。
ところが、現代においてはその世界中のボクサーをチェックしている団体が複数あるのです。
ボクシング団体って?
世界チャンピオンを認定するボクシング団体の役割は以下の2つです。
・世界チャンピオンを認定する。
・加盟国のボクサーをチェックして、階級ごとのランキングを作成する。
ここでも信用性の問題になりますが、あなたが1人でボクシング団体を設立して、「俺が世界チャンピオンだ!」と自称するのは自由です。
ただし、そんな個人的なボクシング団体など存在自体を知られていないので、「はいはい」で終わってしまいます。
世界チャンピオンと認定されても、そもそも認定するボクシング団体が世間に認知されていなければ意味が薄いのです。
主要4団体
世界的に大きなボクシング団体は以下の4団体です。
・WBA(世界ボクシング協会/World Boxing Association)1921年設立
・WBC(世界ボクシング評議会/World Boxing Council)1965年設立
・IBF(国際ボクシング連盟/International Boxing Federation)1979年設立
・WBO(世界ボクシング機構/World Boxing Organization)1988年設立
一番の老舗であるWBAから、各3団体が独立する形で設立されました。
他にもマイナーな団体はあるのですが、ここでは割愛しますけれど、それぞれの団体が世界チャンピオンを認定しているのが一般の人にわかりずらい点だと思います。
例えば、ミドル級の各団体チャンピオンは下記のとおりです。
WBA:村田諒太
WBC:ジャモール・チャーロ
IBF:空位
WBO:デメトリアス・アンドラーデ
このように、ミドル級1つとっても複数の世界チャンピオンがいることがわかります。
さらにボクシングは階級制なので、各階級に世界チャンピオンが認定されます。(各階級についてはこちら)
男子は17階級に分かれているので、単純に考えてボクシングの世界チャンピオンは68人はいる計算になります。
と、ここまでは整理して考えれば困ることもないのですが、問題は次です。
乱立する世界チャンピオン
ボクシングの記事を読んでいると、暫定王座、スーパー王座なんて言葉がよく出てきます。
これはWBA特有のチャンピオンの上にスーパーチャンピオンがいるというよくわからない図式です。
果てはダイヤモンド王座だのインターコンチネンタル王座だの出てきて、通常のチャンピオンの価値がわかりづらくなっています。
各団体の世界チャンピオン名称のまとめ
WBA | WBC | IBF | wbo |
スーパー王者 統一王者 休養王者 レギュラー王者 ゴールド王者 | ダイヤモンド王者 名誉王者 休養王者 フランチャイズ王者 レギュラー王者 暫定王者 (シルバー王者) | 王者 暫定王者 | 王者 暫定王者 |
このようにWBAとWBCについてはふざけた状況になっています。
各団体のチャンピオンの認定基準などは別記事で書く予定です。
チャンピオン乱立の理由
ボクシング団体の主な収入源は、世界タイトルマッチの承認料です。
いくらボクシングが強くても、ボクシング団体が認めてくれなければ世界チャンピオンにはなれません。その世界チャンピオンを決める試合を開催するにあたってボクシング団体に収める承認料こそが団体の収入になります。
当然、ボクシング団体は世界タイトルマッチを多く開催したほうが収入が増えます。
じゃあチャンピオンがたくさんいた方が収入が増えるじゃん!
という考えのもとに、よくわからない名称の世界チャンピオンが乱立されたのが実情です。
個人的にはIBFやWBOのチャンピオンは各階級に1人だけという姿勢のほうがシンプルでわかりやすく、ファンも増えると思うのですがどうでしょうか。

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